銅(どう)は景気の母(スズカズ)

鈴木一之です。

株価は基本的に、その国の経済活動に連動して動きます。

景気と株価は表裏一体の関係にあります。景気がよい時は株価は上がり、景気が悪くなると株価は下がります。したがって、株価の動きを見る上では、景気の動向、経済活動の状況をよく調べておく必要があります。

しかしご存知のように、景気とはこれが実にわかりにくいものです。

「景気ってなあに?」と小学生のお子さんからまともに問いかけられたお父さんは、ホトホト困ってしまいます。高校生、大学生にさえ、わかりやすく説明することはむずかしいものです。

ここでは株価と景気の関係を、折に触れて、少しずつ掘り下げてゆこうと思います。

まず、最も端的な説明として、モノの値段の動きがイコールそのまま、現在の景気の動きを現わしていると理解してよいでしょう。

「モノの価格変動=景気動向」、です。

この等式を前提とすれば、景気はビジュアル的にずいぶん描きやすいものになります。

モノの代表例として、ここでは銅(どう)を取り上げます。

銅は鉄(てつ)と並ぶ基礎的な金属で、紀元前の時代から人類の役に立ってきました。あらゆる材料、原料の中でも最も多く使われている元素のひとつです。

電気の伝導性が高いため、電柱から電柱へ、電気を伝える電線は銅線で作られています。パソコンや自動車の中にも銅線は無数に張り巡らされています。モーターは銅線を巻いて作られ、半導体のリードフレームやプリント配線基板も銅箔でできています。

文明が勃興する時に銅の使用量は急増します。そのために、銅は「産業の母」、「景気の母」とも言われています。

世の中の経済活動が活発になれば、銅のニーズ(需要)は高まり、その需要の増加によって銅の価格は上昇しやすくなります。

反対に、景気が悪くなれば銅のニーズは減少し、銅の値段は下がりやすくなります。

銅の値動きを追いかけていれば、景気の動きの一端がわかるようになります。そしてそれはすなわち、株価の動きを追いかけることにつながってゆくのです。

銅の値動きをグラフで示しておきます。

最近の動きでは、トランプ大統領が誕生した2016年11月に銅市況は大きく上昇しました。「トランプノミクス」に期待した動きということになります。

その後は高止まりから横ばいの時間帯が長く続きましたが、最近では2017年5月初旬に安値をつけて、そこから徐々に上向きの動きに変わりつつあります。

マクロン大統領が誕生してユーロが上昇に転じ、世界経済が保護主義の台頭から守られたことを好感した展開と見ることもできます。

したがって、長期金利の上昇で世界の株式市場が動揺しようとも、銅の値動きがこのまま崩れないようで安定していれば、世界の株価もひとまず安泰、と見ることができそうです。

もちろんこの件はまだ現在進行形であって、今後もフォローを続ける必要があります。またここでご報告することがあろうかと思います。

(以上)