チャート分析による勝ちパターンの研究(2) (魔術師 奥村)

前回の続きです。

某証券会社との共同研究をした話でしたね。

研究の目的は、チャート分析を用いて投資をすると本当に儲けられるのか、の検証といえるもので、このようなものです。

1.最も(日本で)有名なチャートパターン40種において定番となっている売買パターンを設定し
2.最も流動性の高い銘柄としてTOPIX500銘柄を対象に、
3.チャートパターンを描く
4.チャート40種に該当した銘柄はいくつでも、あらかじめ決められた売買を行う。
5.当然に損益も出るので、40パターンの序列をみてみる。

6.4のパターンが出たA銘柄とは全然関係ないB銘柄をやはりTOPIX500から任意に抽出しAと同様のタイミングで売買してみて、その損益をAB比較する.

というものです。

 

1990年から2015年までの期間、日次株値を利用し25年間の500銘柄を、1年ごとに区切って銘柄ごと、チャートパターンごと、に集計しました。その結果は、大変におもしろいものでした。

集計数値そのものは、研究の守秘義務があるため公開できないのですが、私が考案した手法はこうした場で発言しても良い事になっています。

まず、40のチャートパターンが示した500銘柄の売買回数はすさまじく数が多いことがわかりました。
40のチャートの読みでは、売り、買いそれぞれ必ずペアで存在するので、倍の80のパターンの売買が存在します。

多くの銘柄は、80も売買パターンがあると、だいたいどれかには当たるので、それを、500銘柄について行いますから、全体では一日 数万回にも及ぶものでした。

一度売買した方法は、同じ銘柄に連続して売売,買買で使うことはしない、という条件を付けたのですが、それにして、この回数です。

それを25年間行うわけですから、合計 数億回の売買は行った計算になります。実際には、A銘柄と同時にB銘柄も売買をしているので、その倍、つまり10億回を超える売買シミュレーションを行いました。

実験結果を述べると、こうなります。

1.全てのチャートパターンの勝率は、似たようなものであり、
2.AとBの銘柄損益を比較すると、似たようなものでした。
3.投資期間は自由に設定できるようにしましたが、何日に設定しても結果は変わりませんでした。

1-3の結論をまとめると、チャート分析をしてもしなくても、結果は同じということです。

ただし、

4.40のチャートパターンにおいての序列は多少なりともあり、ファンダメンタルの要素が少しでもある方が成績が良い傾向はありました。

 

ここから先は、少々ややこしい展開なのですが、あと少し頑張ってつきあってください。

統計を解釈する場合、統計学原則に従います。

「翌日の株価の上下は本日の株価の上下に影響を受けない」、と仮説を立てました。要するにデータの偏りが偶然生じた(=チャート分析で上下を予想できる)確率は、無視できるほど小さい、という仮説をたてているわけです。

この仮説を棄却するには、1つでも突出した勝率があるチャート分析の手法がある事を示せば良い事になります。

科学的な方法論一般の考え方でもあります。
結論としては、統計的に有意な水準でこの仮説を説明できた、ということになりました。

 

補足1
統計学でいう第一種の誤りという定義があります。帰無仮説という考え方です。
「株価の偏りは偶然なのに、偶然ではないと結論付ける」
第二種の誤りはこうなります。
「株価の偏り偶然ではないのに、偶然だと結論付ける.」
つまり、株価は一日というレベルではランダムに偶然上下しているのに、偶然ではない何かのルールに基づいているからチャート分析は有効なのであると考える意見は、第一種の誤りであることが、明確に証明できたことになります。
補足2
選定した40のチャートパターンはこの場では公表しません。
なお、「銘柄Aと任意抽出した銘柄Bには関係がない」(あらかじめAと資本関係がある銘柄は抽出しないようにしてあります)点は考慮しています。

それでは、また次回。