精神論は相場には通用しない (魔術師 奥村)

先日、つきあいのある人から誘いがあって、あるセミナーに少しだけ参加してきました。

そのセミナーでは、精神統一を行うと、物理を超越できるようになる。そうすると、やけどもせずに火の海を渡ることができるようになり、実際、その指導を受けると誰でもそうなれる。その結果、成功できるのだ、といっていました。
宗教のセミナーではありません。

今日は、これを解明してみようと思います。

冷静に見つめる限り、精神統一をすると火の熱さを恐怖とは思わなくなるかもしれませんが、だからといって、やけどをしない、なんてことはないはずですね。

興味があったので、その修行大会に参加してきた方に状況を詳しくきいたのですが、
火の海を渡ったのは本当だった.ウソではなかったのです。

そして、それができた理由もすぐに解明できました。それを論理的に示してみます。

まず、火の状況としては、火の海は、いわゆる火が燃え盛っている海ではなく、炭が燃えており、その上をはだしで歩くのです。下を向くなと特に注意されます。

歩く距離は短いものです。

さて、人間は、タンパク質でできています。

タンパク質でできている皮膚は、一定の熱を一定時間加えると細胞破壊がはじまり、さらに加え続けると焼けて黒ずむのですが、これがやけどです。

やけど がおこるかどうかは、何度の温度に、何秒間接したかで単純に決まります。

やけどがおこる臨界点をやけど関数とすると、

f(T,X)=T(温度) * X (接触時間)

です。

具体的な数字では、70度で1秒以下であれば火傷は起こりません。

やけどになるまえに、つまり細胞破壊する前に冷やしてしまえば、皮膚は多少あかずみますが再生されます。

この知識を使って、炭の状況を私が解釈すると、こうです。

炭はレイヤーになっていて、下層にゆくと赤く燃えているのがわかるが、一番上層は燃えていない。温度的には足が直接触れる上層の温度は70度くらいと思われます。

修行者は全体が燃えているように錯覚しているわけです。

そこを渡る方法は簡単です。足は二本ありますから、表面温度が70度の場合、まず右足を触れて、1秒以内に右足を浮かせて左足に踏み変えるならば、右足は直ちに冷え始めるので安全というわけです。

左足も、同様です。一秒以内に右足に差し替える。

これを繰り返すと、スタスタと歩いて、やけどせずに、はだしで火の海を渡ることは可能です。

下をみると確かに下層の炭は赤いので恐怖にかられて足がすくみ、1秒以内に足を踏み変える作業ができなくなる。だから下を向いてはいけないのです。

上を向いてサクサクすすむ限り、別に精神統一しなくても、その先生の何かを学ばなくっても、可能なはずです。

相場や株式でも、これと似たような宗教がかったセミナーがあるようです。精神を統一し、教えを守れば勝てる、といった類です。

あなたの、みなさんの、求めるものが精神統一の方法と火を渡る達成感であったなら、それでよいと思います。

しかし、本来は、別に精神なんぞ統一しなくっても、正しい方法を知っていれば相場で勝てるものです。

相場で勝つことを求める限り、もっと理論的で、もっと普遍的な、つまり正しい方法を知ることが、今年も、来年も、その先も、ずっと勝ち続ける可能性が高まる、ということになるでしょう。

精神論は不要とはいいませんが、その前に正しい方法を知り、身に着けるのがまず重要なのです。

では、また来週。