下げのきっかけになった理由、そして今の相場 (魔術師 奥村)

こんにちは。

今週の株式相場は先週と打って変わって良い感じでスタートしましたね。

今回の日米株式相場の下げは、きっかけが米国金利の上昇にあったのですが、金利と株式相場の関係に関して、相当数の質問を受けました。

本当は、過去の下げの記録をひもとく予定でしたが、急きょ変更して、、
良い機会なので、金融政策の仕組みをおさらいしましょう。少し長いかもしれませんが、基本を押さておきます。

欧州、日本、米国には中央銀行があります。
欧州(Europian Central Bank,ECB)、日本(日銀)、米国(Federal Reserve Bank, FRB)です。

中央銀行の役割は、金融システムの秩序維持と経済の安定化です。

具体的には、通貨の制御を通して金融システムをコントロールしたり、金利を調整して物価をコントルールします。

2008年リーマンショックで、世界中が深刻なデフレになりました。

デフレとは経済の収縮であり、企業収益がどんどん下がり、倒産が起こります。
物価は下落するのですが、失業が相次ぎ、モノが売れず、お金の流れが止まるのです。

お金は経済の血です。その血が流れないと経済は死にますね。

そこで、中央銀行はお金を市中にじゃんじゃん供給して、よく流れるようにします。

お金を無理無理にでも流すと、循環を始め経済が活性化するのです(この考え方は現代経済の基本です).

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お金を市中に供給するのは、いろいろ手段がありますが、中央銀行が銀行に安い金利でお金を市中銀行に貸すのが基本です。

最近では、さらに債券や株式を買ってお金を支払うことでも達成しています。日銀が国債を買い株式を買うのは、このためです。

よく、お金を刷っては市中にばらまいている、などと書かれているのは、実際は、なにもデパートの屋上から投げてばらまくのではなく、きちんとモノ(債券や株式)を買ってその支払いを紙幣で行っているわけです。

さて、世の中の金利を下げて、お金を借りやすくすると、お金は良く流れ始めますね。そこで、日銀は、金利を下げます。

そのためには、日銀が

「銀行のみなさん、明日から0.0012%の金利を民に適用したまえ」、

というわけではなく、金利を低くなるように、誘導しているのです。

 

日銀は世の中と直接の取引はしないので、こうします。

銀行間の日々の貸し借りである短期資金取引は、日銀にある各行の当座預金口座間で処理される(コール市場といいます)のですが、そのための資金を(日銀が銀行に対し低い金利で)十分供給します。

そうすると、金利が下がるのです。最高0%まで調整できます。

 

さらに今はマイナスに誘導していますが、そのためには、誘導金利を0%にしたうえで、国債や株を日銀がじゃぶじゃぶ買って市中銀行にお金を圧倒的に供給することで達成できます(異次元の緩和)。

そうなってくると、世の中が低金利になりますからお金の借り手は増え、たとえば企業はお金を借りて技術開発をしたり、個人は住宅を買い、経済が回るわけです。

今、日本と欧州はこの手法でお金をじゃんじゃん流している最中です。

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米国はいち早くこの戦略をとり経済は回復したので、元に戻そうとしています。今まで流していたお金を徐々に回収し、下がった金利を本来の秩序正しい金利に戻そうとしています。これをテーパリングといいます。

こうなると誘導金利は徐々に上げられます。中央銀行の倉庫にある、買いだめた債券(主に国債)は市中で売りさばかれます。

金利が上がると、お金は高い利子を求めて集まる特質があるので、株式市場からお金が逃げてゆきます。

米国の金利が一気に上がるという市場の杞憂とあいまって、今回の米国発、株の暴落が始まりました。

もともと、米国の株は急激に上がりすぎたので、誰もが、そろそろヤバイ、と思っていたころでした。

金利が急激に上がったというよりは、それをきっかけに高すぎる株式価格に調整が入った、というべきでしょう。

米中央銀行は、株価は1年前に比べるとまだ高いのだから下落は放置する、テーパリングは計画通り行う、といっています。

毅然としたゆるぎない態度は、市場に対しては良いメッセージです。今後、ECBも、日銀も、同じ道を通過しますので、この事実を覚えておきましょう。

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PERという指標で妥当な価格を考えると、程よく妥当な水準はNYダウで水準上限が24150ドルです。先週のNY終値は24190なので、まだ少し割高です.もう少し下がった方が本来水準です。
しかし、企業業績は上がってきているので、今の水準のままでも、そのうち業績が追いつき、許容範囲内のレンジとなるでしょう。

これに対し、日本の株価は米国と同じだけ下げたので、圧倒的に割安になりました。中長期的な投資資金がある方は強気に買って良いと思います。
短期投資(いわゆるトレード)であれば、VIXが上昇しているので、儲け時でもあります。

では、また次回