sell in mayの正体 (魔術師 奥村)

今年も、あっという間に5月になりました。

例年、この時期は2017年度の決算発表だけではなく、2018年度、つまり、来年の3月決算の会社予想にも注目が集まりますね。

ところで、5月というと、セルインメイ、という言葉が有名です。

日本では、5月は株が下がる(だから5月は買うな、売っておけ)という意味で使うことが多いはずです。

そんな言い伝えは、いつごろから始まったのでしょうか?

なにより、その言い伝えは本当でしょうか?

まず、セルインメイという言い伝えの意味です。

Sell in May, and go away ; don’t come back until St Leger day.
五月に売っておけ。そして、(St.Leger day)がある9月の第二土曜まで戻るな

これがフルセンテンスです。

ちなみに、St. Legerとは、Leger Stakesという英国のクラシック三冠競馬で、三歳馬だけが出走します(日本では菊花賞が同様のレースをしていますが、英国をモデルにしたものでしょう)。

ウォール街では古くから伝わる格言ですが、日本に入ってきたのは案外最近のことです。

昔から米国で存在した言い伝えが、なぜ昔は入らず、最近入ってきたのでしょうか?

ここで、米国で、なぜ Sell in Mayという言い伝えがあったのか確認しておきましょう。

米国ではヘッジファンドの存在が大きいものになっています。ファンドである限り、解約があるので、成績不振ファンドからは資金が逃げてゆきます。

その解約の機会が4月から5月にかけてある(と言い伝えられている)ことから、売られる->下げるとされています。
(この真偽に関しては、いずれ述べたいと思います)

日本にこうした言い伝えが入ってきたのは、2010年前後でした。8年前ですね。
それ以前には、そんな言い伝えは広まっていなかったのです。

2010年といえば、2009年に民主党政権になって初めて年を超えた時です。
新政権期待で4月まで上がった相場でしたが5月に急落したのですね。
2011年は大震災で低迷、2012年は政権末期で低迷した相場でした。

さて、セルインメイが妥当であるかどうか、5月最初の営業日に寄付きで買い、5月最終営業日に引け値で売った場合の、騰落率をしらねてみると当たり具合が明らかになります。

日経平均でみてみましょう。わかりやすく一覧にしました。

結果はご覧の通りです。

1991年以降、5月は17勝10敗。勝率 63%。

負けが目立つのは、1999年から3年、および、2010年からの3年でしょう。

今回は、2010年からの3年間にフォーカスします。この頃は、5月になると毎年下がった。

それが3年も続いたので、英米の言い伝えを当てはめた、というのが実態であることが、わかってきます。

民主党政権が相場に残した遺物であったのです。

なにより重要なのは、そんな言い伝えは当たっていないということです。

言い伝えをやみくもに信じてはいけない、ということも合わせて肝に銘じてもらいたいと思います。

なお、勝ち負けでけではなく、騰落率を%で数値化すると面白い傾向も発見できます。
ぜひ皆さんも、自分の手を動かしてやってみてください。

では、次回をお楽しみに