金利の上昇がもたらす相場への影響(1) (魔術師 奥村)

今回は、米国が直面している「金利が上昇する」、という話題に触れてみます。

まず、レベリングを兼ねて、金利というのは、何かを考えます。

金利というのは、銀行からお金を借りた時の利息金額を、元金に対する割合で表したもので、年率換算レートで示します。

たとえば、金利1%であれば、100万円を銀行から借りた時、年間1%=1/100 、つまり、100万円の1/100である1万円が1年間の利息、ということになります。

ここで、お金を借りる期間が問題になります。1年借りるのか、6年借りるのか、30年借りるのか、です。

借りた期間に応じて、一般には1年未満を短期、1年以上を長期、と呼びます。

お金の貸し借りという金融の期間では、2年までを短期、数年(厳密ではないですが5年まで)を中期、5年-10年までを長期、10年を超えると超長期、と呼び、短期はさらに、1日をオーバーナイト、1日単位で設定されるn日期間をトムネ、と呼びます。

お金のこの貸し借りというのは、投資者である資金を持っている人や組織は、資金を運用するために投資行動をしますので、貸し手になりますね。
資金を調達したい需要者は投資者から資金を借りて物を買ったり事業に宛てたりするので、借り手になります。

お金は個人であれば、銀行から借りる、貸す(=預ける)ことが多いのですが、経済の世界では、お金を借りたい組織(国、地方自治体、事業法人、金融法人)が、組織として債券を発行します。

債券とは、お金を必要とする組織が発行する、あらかじめ利率や完済する日=満期日が決めてある一種の証券です。国が発行する場合は国債、民間企業が発行する場合は社債などと呼びます。

最も一般的な債権は、割引債と呼ばれるもので、満期日(たとえば1年後)に100万円を返す(償還といいます)として、それを100万円より割り引いて99万円で売る、といった仕組みをとします。

このケースでは、投資家側は、99万円で購入し、1万円の利益があるので、リターンは1/99=0.0101=1.01%/年になります。

こうした債券を、投資家に売ることで債券市場の中でお金を貸し借りするのが一般的です。
投資家は、満期日まで待っても良いし、債券市場で売買することも可能です。

債券市場という言葉が出てきましたが、株式市場でいう東京証券取引所(東証)のような、取引所1か所で集中して売買をする仕組みをとっていません。

株式は、1998年12月まで、取引所集中義務が規定されていて、東証へ注文を流して取引を集中させ、勝手なところで好きな価格をつけることを禁じていた経緯がありました(今は夜間や私設取引もさかんで自由化されています)。

債券に関しては、もともと、プロ投資家のみが取り扱う商品なので、そうした規制がなかったのです。

債券市場は、機関投資家同士が相対(OTC,over the counterといいます)で取引する事が多く、そうした取引全般を、債券市場といっています。そして、金利は債券市場で債券の取引を通して形成されます。

日本では、日本相互証券が、銀行や証券会社同士の取引を売買仲介していて、ここが債券価格をロイターに提供し、財務省もこの日本相互証券での取引データをもとに金利を計算し、国債の金利としてHP公表していますが、半年複利に計算しなおして発表しています。

なお、業界では、相互証券を、ブローカーのブローカー、BBと呼んでいます。

ちなみに、債券価格が下がると金利が上昇します。債券価格が上がると金利は下がります。いま米国では債券価格は下落し金利が上昇しています。
さきほどの例では、99万円で買って1.01%の金利でしたが、同じ債券が99万円から98万円に値下がると、2/98=2.04%に金利が上がることからも理解できると思います。

最もよく使われる期間は、短期金利と長期金利です。金利の期間は、債券の残存期間と一致しています。

本来の標準的な先進国の世界では、インフレがあるので、その分を見越して、長期金利は短期金利より大きくなります。これを純イールドと呼びます。イールド(yield)とは、債券用語で利回りのことです。

横軸に債券の残存期間に応じて1か月、1年、10年、30年..とメモリをとり、縦軸に金利をとると、右上がりになりますね。これを、イールドカーブと呼びます。

少し難しくなってきたので、このへんにしておきましょう。

いずれにしても、金利がもたらす原理を知っておくと、非常に便利です。

金利が動くと、為替が動きます。商品価格が動き、株式市場も動きます。

我々は相場に対峙するのですから、どのような時に、どういう方向に動くのか、その理由や原理とともに抑えておきたいものです。

次回以降、相場を読むのに役にたつ金利に連動する動きを、述べてゆきたいと思います。

おたのしみに。