論理からのアプローチ(魔術師 奥村)

私達はいろいろな問題に日々直面しています。

トレードに限らず、その問題が大きいか小さいかを問わなければ、一日に数知れない問題に直面していることでしょう。

その多くの問題は、論理的な整理、もしくは、サイエンス的に数値化する見える化アプローチで解決する事が多いものです。

ここまで書き始めてふと思いつきました。最近あった、このような事があったという話からスタートします。

夏休み前、ゼミの学生となんとなく世間話をしていたところ、その学生が電車に乗ったとき、席が埋まっていた。座りたいので、適当な人Aさんにあたりをつけて、その人が降りるのをまっていたが、その人は降りずに違う人Bさんが降りていった。そのうちに混んできて、結局座れなかった。

「ありゃー、最初からBさんの前にいればよかったー」ということでした。

それはそれで、悪いことばかりでもなく、足腰が鍛えられて良かったではないか、という切り返しもしながら、おもしろいので課題として取り上げてみることにしました。

「飯田橋で中央線下りに乗った。その電車で座ることができる可能性(言い換えれば確率)を上げる事は可能か。その理由と、可能である場合、その要素はなにであり、どう行動すると、どの程度改善できるか、考察せよ。ただし、これは中央線であるので、考察にあたり、制約条件を自ら付与しなさい。

こんな課題です。
一定の条件を自分で決定し、課題を具体的に自分で定義します。

たとえば、すいている時間を見計らって乗る、という解もありますね。
すいてる時間に座るという事を解くのが課題であれば、山手線がすいている時間帯を曜日ごとに調査することでかなり解に近づきますし、乗る駅ごとに、どこの車両がすいているか情報をまとめておけば、良い答えになるでしょう。

比較的すいている電車が来るまで待つ、という解もあります。それを解く課題であれば、何本まで待てるか、という制約条件を課し、その車両の人口を時間の関数とその確率密度で示すことができれば、座る可能性が計算できます。
この考え方は、ラスベガスでブラックジャクで勝つための方法を解明する方法と共通です。

今回は、一般的に、もともとの学生が経験した状況、つまり、乗る時間は任意として乗ったとき、席はすべて埋まっているが、自分より先に降りる人がいたら、おりそうな人の前に立っていれば座れる。
という想定を置きましょう。優先シートは席の対象から外します。

このようなディスカッションが始まりました。

車両をまたぐと問題が複雑化するので、隣の車両まで移動しても空いている席は見つからない事を前提にしてはどうか。

席は埋まっているが、立っている人は少なく、どこかに座れる可能性がある状況、平日で言えば17:00前くらいを前提にしよう。

自分が降りる前に座る必要があるので、飯田橋からの乗車時間という時間制約も必要、

時間ではなく、次の巨大な駅までに間に降りる人を見つける方法ではどうだろう?
つまり、飯田橋から乗る場合、下りなら新宿、上りなら秋葉原で大量に人が降りるので、その時には座れる確率が高い。それではおもしろくないので、その前に座る事を課題にしよう、

自分の守備範囲は広いほど有利。3人掛け席の前にいるか、7人掛け席の前にいるか。また、自分が立っている位置の後ろに、同じように虎視眈々と立つ人がいなければ、自分の守備範囲は倍増する。

うん、それなら、自分の横に立つ人がいる場合、自分の競合相手となるので不利だね。

よし、その観点は、複数の解があった場合に、競合が少ない席を観点にひとつに絞り込もう。

などなど、こうして制約条件が決まってきました。

このように、課題を定義してゆく過程は、問題を研究として取り扱う場合に、重要な事です。

定義をあいまいにした問題は、その答えもあいまいになりますし、そもそも、答えにたどりつかなかったりもします。

みなさんも、いろいろな意思決定をすることがあると思います。

投資に関していえば、銘柄、売りと買いの量、タイミング、をあらゆる前提条件の中できめてゆかねばなりません。

投資に限った話でもないのですが、

その時の状況(いいかえると制約条件あるいは前提条件)によって判断は異なるものですが、
その条件をきっちり定義してみるのは、より良い意思決定のためには有効なトレーニングになると思います。

ちなみに、この課題は、ゼミ生の課題のひとつになりました。

では、また次回。