ジェロントロジーを身近な問題として考えてみる (魔術師 奥村)

この8月で、僕は57才になりました。

政府の定義によると、あと3年で前期高齢者の仲間入りです。

そこで、今回は少しばかり意表を突いた観点のトピックを取り上げます。

2005年の日本の人口は12,777万人(総務省HP)。

この年をピークに、日本の人口は下降に向かっています。
そして、人口下降の速度は上がってゆきます。

今は年間0.15%の減少率ですが、7年後の2025年には年間0.5%近くになり、
2065年には年間1%人口が減ります(内閣府高齢社会白書)。

同白書によると、65才を超える高齢者の割合は、
2010年に22.8%であったのが、
2025年に30%の大台に乗り、
2045年に高齢者人数としてはピークを迎えます。

人口の減少と高齢者人口の増大は、極めて密接な関係がありますが、
どちらも問題を内包しています。

まず人口減少は、国の経済が発展しない事を意味します。

消費者が減るからです。

ITやロボットの活用で労働力は補えるかもしれませんが、住宅や会社労働者の一人当たりの資本装備は減少するので、社会資本も減少します。

一方、高齢者人口の増大は、老齢者向けの市場が拡大する事を意味しますから、今後有望な市場になることは明白ですね。

しかし、その市場拡大は、良い事だけでもありません。給料をもらわない世代の消費になるので、貯蓄を取り崩し、投資の減少を伴う点で、今までの経験やノウハウが通用しないのです。

この問題は、今後あらゆるところで取り上げられる問題です。

ギリシア語のgeron(老齢)をつかい、研究(logy)と合体させた単語がジェロントロジーです。老齢学などと訳されますが、響きが悪いので、ジェロントロジーをそのまま使うようになってきています。

国家レベルとしては生産と納税、そして社会福祉や介護のバランスが今と大きく変わってしまい、雇用や資産と社会保険といった社会構造の変化が必要になる、ということです。

こうした問題を、国家のリーダーたちは本気で取り組んでいるのか、疑問もありますが、

個人では解決できない大きな問題すぎるので、まずは身近な話として仕切り直してみます。

主にお金の話を中心に考えてみます。フィナンシャル ジェロントロジーなどともいわれます。

健康で長生きするのは、一般的に良い事だと思いますが、俗にいう、長生きのリスクというものが実際には存在します。

給料を稼がない世代になっても、生活にかかるお金は変わらず発生しますよね。

総務省の調査では、夫婦世帯において、月に約24万円かかります。内訳は食費、光熱費、交通通信費などです。

家賃は入っていません。つまり、住宅ローンは払い終わっているという想定です。
車も保有していない想定です。

その想定でも、首都圏では、月額24万円で夫婦二人の生活をするのは厳しい気がしますが、モデルケースとして使ってみましょう。

生活費=支出24万円に対し、収入は国民年金は月5.5万円です。厚生年金が月14.8万円です。

国民年金をもらう人は、毎月18.5万円足りません。

自営業をもっていれば、定年はないので働く続けることができるかもしれません。
仕事がなければ、毎月18.5万円をどうするか、今のうちに考えておく必要があります。
退職金システムはないでしょうから、かなり前から準備をしなければいけない事になります。

厚生年金をもらう人は毎月10万円足りません。

厚生年金をもらう人は会社員ですから、退職金を2000万円もらえたとして、それで不足分を補うとすると、年間10万x12=120万円を補う必要があるので、6%づつ、取り崩す必要があります。

この調子で取り崩すと、退職金は16年で枯渇します。

65歳の人は、16年後の81才になると退職金は底をつきます。65歳の男性の平均余命は19年なので、平均84歳まで生きます。

5歳年下の奥様がいるとして、60歳の女性の平均余命は28年ですから、平均88歳まで生きます。

資金が底をついたあとも、平均数年は生きなければいけないのですね。

これは平均的な余命の話ですから、もっと長生きする人も半分はいます。

資金使途のシナリオは、今の生活費24万円が継続すると単純化していますが、これも無理があります。

たとえば、自宅にせよ、マンションにせよ、メンテナンスが必要です。

家電も壊れたら買い替えの費用がかさみます。
壊れなくても、TVや車(もしもっていれば)などは技術革新により、インフラが変わったら買い替えが必要です。

支出には、孫のおこずかいとか、自身のレクリエーションは上積みすべきです。

自宅の固定資産税も本来は考慮しないといけません。

自宅を所有しない賃貸の人は、保証人が必要ですが、老齢者の保証人になってくれる人を
探すのが難しくなってきます。

収入元である年金は、減額される可能性があります。

大きな病気になったら、個人負担も発生するでしょう。

お先真っ暗に思えてきます。

これが長生きのリスクです。

どうにかして解決する必要があります。
幸い、いくつかの解決方法は既に用意されています。

これは、またの機会に述べる事にします。