2018年度 下半期に向けて (魔術師 奥村)

こんにちは。
早いもので、もう9月。欧米では新学期に入りました。日本でも今月で上期が終了します。
キリが良いので、今後の相場を見るための、要素を考えてみましょう。

株式相場は、なんといっても社会の景気に依存します。個人では賃金と雇用ですが、つきつめると企業業績です。

その企業業績は、今期は絶好調です。今年3月に終わった昨年度は、全体としては過去最高の成績でしたが、それを上回るのが見えてきています。

第一四半期はその前兆がありました。今月で第二四半期が終わります。その成績が判明するのは1か月半後ですね。
(東証は、上場企業に45日以内に業績発表をするように義務づけていますので、業績発表は11月中旬になります)。

来月から第三四半期がはじまりますが、その時には、既に今期過半が過ぎていますので、企業業績の着地点に対する予想精度が高まるのです。

9月下旬における中間配当は、過去最高になることはもうわかっています。その配当は、株式への再投資に回りますので、今月末の配当落ち後、相場に大きな買い需要が入ってきます(簡単な試算では5千億円です)。

配当が大きいという事は、一株当たりの利益(EPS)は大きいという事でもあります。日経新聞社の予想ではNK225のEPSは1733.過去最高です。

日経平均をEPSで割るとPERが算出できます。昨日引け値は22697でしたから、

22697 ÷ 1733 = 13.09倍 =NK225のPER

ですね。

そして、為替の今期の想定と実勢レートの差による為替差益(あるいは差損)も見えてきます。昨日までの今期平均ドル円レートは、110.01円でした。これは、多くの企業が想定したレートより数円円安ドル高です。

この為替レートのままで進む場合、相当な為替差益が出てくるでしょう。

しかし、これだけ良いデータがありながら、なぜ、上がらないのでしょう。

いくつかの理由があります。

まずは、なんといっても、米国を対象としたEU,北米、中国、日本の通商問題です。

米国の貿易赤字は1位中国、2位メキシコ、3位日本ですから、ワースト3に対しては力を入れてくるでしょう。

日米の交渉(FFR)は、まだ担当者が顔合わせしただけで、実質始まっていません。

NAFTA交渉はメキシコとは合意完了しました。カナダは、長引いています。決裂する可能性は低いものの、合意に至らず、メキシコ-米国の二国間で先行して新NAFTA体制がスタートする可能性もあります。

なぜカナダを置いてきぼりにしてでも、二国間合意に持ち込みたいのかというと、政権の思惑です。メキシコは、新大統領は、米国に強硬な左派で12月1日に就任します。トランプ大統領は11月に中間選挙があり、成果を形にしたい。

だから、急ぐのです。

そのメキシコ―米国の合意に、輸入車の数量規制(240万台)が入ったことは、日本の自動車メーカーには衝撃だったはずです。日本も同じ数字を割り当てられるとしたら、非常に厳しい事になるでしょう。輸出台数は現在170万台なのですぐには規制されないとしても上限が近く余裕がないし、そもそも、現地生産比率の基準が厳しくなるので、結構な北米生産車は北米製と認定されない可能性が高いのです。

その内容がきちんと日本に伝わると、相場にも影響が大いにあると思います。

米中は、既に関税の掛け合いが始まっており、アンダーテーブルでは、強い駆け引きを行っている最中です。

大国の面子の問題もあるので、そう簡単には解決しないと思います。

9月早々にも米国は2000億ドルの輸入に対して25%の追加関税を発動する意向です。

長引くと、とにかく世界経済の1位と2位の戦いですから、世界景気への影響は懸念されてくるでしょう。

中国経済の成長が世界をけん引しているのは間違いなく、日本企業も、業績を下方修正するハメになる可能性がある、ということです。

欧州も自動車を中心に米国と交渉を続けている最中です。

さらに、EUの経済が弱い国の債務問題は、解決できてはいません。

忘れてはいけないのは英国のブレクジットです。EUから去る日は決まっていてそれは来年の3月末ですが、去った後の関係を全くなにも成立させていません。それどころか、去るときの条件すらも何一つ解決できていません。

こうした、不透明感が、市場心理を曇らせ、2万3千円が目に見えない壁となって立ちふさがっているという構図になっていると思います。

相場でつく株価は、こうしたプラスの要素とマイナスの要素が入り混じった結果、売りと買いのバランスで決定されます。

不透明感を悪化させる要素が消えれば消えるほどプラスになるわけですね。

その見通しはどうなのか?

まずは皆さん自身で考えてみてください。

では、また次回。