株式先物指数と現物指数はなぜ違うのか (魔術師 奥村)

相場というものは、

『上にいくか、下に行くか』
のいずれか2通り、しかありません。

それに加えて、その動きは
『短期か、中期か』

などといった期間という要素が加わるので、この場合は (上下)2x (短期中期)2 = 4通り
になるでしょう。

今回は、話を単純化したいので、3か月という期間(中期)で、『上がるか、下がるか、』に限定します。

どちらかをあてずっぽうで予想するなら、
本来は、『上がる』と読むと少しだけ、『下がる』より
確からしさが上がります。

しかし、それも今は昔。

株式は、長い目で見ると上がり続けてきたことで上がる、
と説明しやすかったのですが、
本質は、実は違います。

その本質とは、

1万円を、債券で運用する場合と、株式で運用する場合を考え、

株式で運用する方が有利な経済状況である場合、

株式投資が有利である、

ということです。

別の言葉で’おおざっぱに’言うならば、

『インフレを上回る(企業成長≒経済成長)をしている』

場合に限って、株式は上がるのです。

現在、まさにそうなっています。

今の日本は、
インフレはマイナス(あるいはほぼゼロ),企業成長はプラスです。
株はじゃんじゃん上がってしかるべきです。

じゃんじゃん上がるとは、現在より必ず将来が高くなる、ということです。

ところが、日経平均の指数(現物指数)と、日経先物指数をみると、

必ず、

株式の先物指数は、現物指数より安くなっています。

あれれ、今の方が高い。将来は安い。

おかしい。不思議ですね。

なぜ、先物指数(=商品としては日経先物)は
現物指数(商品としては225銘柄の株式)より安く
取引されているのでしょうか。

これは、次の原理によります。

先物指数

=現物指数の将来の値と投資家が予想する価格

=現物指数の将来の理論価格

=現物指数より金利相当分、先物の価値が変化する

ここで、金利相当分とは、(短期金利-配当利回り)です。

配当利回りは、日経平均の株式を所有した時に、将来もらえるであろう配当金と、今の取得時価の割合であり、現在1.79-1.93%です。短期金利とは、短期期間における、確定利回りの金利です。

(短期金利-配当利回り)を計算することで、今、仮にNK225現物指数が 23,000円だった場合、そのお金を返済確実な人に貸して運用するケースと、株式に投資して、配当を確実のもらうケースを比較するわけです。
実務的には、TIBORと呼ばれる、銀行間の短期貸し借りの金利を用いられるのが普通です。

TIBORは、1週間もので9/14日時点で-0.00455(全銀協発表)です。
日経平均配当利回りは、9/14日時点で0.00185(日経新聞社発表)です。

従って、金利相当分は、 -0.00455-0.00185=-0.0064=-0.64%

であり、先物は、簡単に言えば、0.64%だけ、現物指数より割安になります。

今、日経平均が2万3千円だとすると、先物は、それより0.64%安い、22853円が理論価格になるのです。
(厳密には、SQまでの期間に合わせて金利区間を調整計算しますし、複利で計算する場合もあり、複雑な計算になり理論価格は少し異なります)。

インフレがある本来の社会では、短期金利の方が大きいので、(短期金利-配当利回り)はプラスとなり、先物は高くなります。

現在の日本は、短期金利は限りなくゼロ、あるいはマイナスです。

しかも、株式の配当利回りが大きいので、金利相当分(短期金利-配当利回り)は、ずっとマイナスを続けています。

従って、

現在の株式指数 > 将来の株式先物指数

になります。

金利を考えると、今の株式をもっている方が価値が大きく、将来は値下がる。

だから先物は現物より安く取引されている、という基本に基づいて先物指数が決定され取引されているわけです。

私が時折、口を酸っぱくして述べる金利は、こうした理論式でも登場しているのですね。

この金利が、EU,米国、日本の相対的な経済関係、ひいては貨幣交換レート(FX)を決定するので、マクロ経済という大きな関係と紐づきます。

これは単純に原理として覚えておいて損はありません。

少し難しくなりましたが、
金利、株式、為替、の関係は相互に影響を与えあいますが、
おおもとは金利と考えると、経済や金融の動きは上手に説明できます。

では、また次回。