ドル円と為替感応度 (魔術師 奥村)

何かが動くと、別の何かが動く。

経済では、感応度として良く使われる考え方です。

たとえば、為替感応度というものがあります。

ドル円レートが1円円高になると、年間の(円換算での)売上がx円(あるいは利益がy %)大きくなる、といったものです。

どの企業も、年度のはじめに、年間の想定レートを設定します。この想定為替レートを用いて、企業は今期の業績予想を計算しています。

しかし、その想定為替レートは、事前にこのあたりのレートであろう、という予想ですが、実際には、年間を通して想定通りピッタリ当たるはずもなく、円高、もしくは円安どちらかにぶれます。

その時の売り上げや利益のそのブレ具合を見るときに為替感応度を用います。

具体例をあげると、トヨタは、今年度、想定為替レートを105円に設定しています。

さて、トヨタは、1ドルにつき、1円円安になると、おおざっぱですが営業利益が400億円増えます。これが為替感応度です。

これを用いて、どの程度、為替に影響を受けるか、みてみましょう。

現時点で、今年度の上半期における日々の為替レートは平均1ドル110円です。

このまま、下期も110円で推移するばあい、トヨタは、想定より5円も円安なので、 5円 x 400億円 =2000億円もの営業利益が会社予想=計画より増えることになります。

トヨタの今期営業利益 の会社予想は、米国基準、連結ベースで2兆3000億円です。これに2000億円が加わると2兆5000億円ですね。2.3兆円に対して2000億円は8.7%ですが、この数字だけ会社予想より営業利益は大きな数字になります。

さらに、2018年4月から6月までの1か月(第一四半期)における、営業利益以外の、その他の収益費用における為替差益が392億円ありますが、これは今後も発生し続けるでしょう。

アナリストは、営業利益を分解して、原価に対する影響、ドル換算価格の変動に対する競争力の影響などもある程度の予想をつけます。

このように企業業績は為替に感応して、プラスに振れたりマイナスに振れます。

海外事業規模の大きい企業をみるときの、注目すべき観点のひとつです。

実は、こうした考え方は企業分析だけではなく、株価に関しても適用できます。

これはまた、次回お伝えすることにしましょう。