最適トレードサイズを計算で求める事は出来るか (魔術師 奥村)

先週米国に来た時はかなり寒く、特に北中西部は記録的な寒さでした。シカゴは -30度だったしミシガン州は非常事態宣言も出されたのですが、今日は一転、日中は春のようなポカポカで、D.C.なんぞ,本日は同じく春並みだった東京と変わりません。

さて、今回は資金運用における、最適なトレードサイズに関するトピックを取り上げます。

いわゆる、アセットアロケーションと似ているのですが異なります。

アセットアロケーションというのは、100というお金を運用する時に、いったいどのくらいの分配で国内資産と海外資産に分けるのがベストか、国内資産や海外資産とは具体的に株式、不動産、債券、などどういった資産を何を指すのかを、顧客に合わせて配分する資産配分技術です。

一方、最適なトレードサイズというのは、投資資産を既に決めてトレードしている人が、その投資資産に対して、1回のトレードに使う資金分配の事を言います。

1回の最適なトレードサイズは、あるのでしょうか。

この質問には、数学的に正確な答えがあります。

答えの前に、まずは、こんな事例を考えてみましょう。

たとえば、1億円の資金があるとして、それを100%株式投資に回すと既に決めている場合、1回の投資資金をいくらにすると良いのか、という問題ですね。

株投資で100万円を投資して、それが200万円にできた場合、100%のリターンと計算できます。
これは素晴らしいことですが、元本が1億円の場合、資金は1億100万円になったにすぎないのです。リターンは1%です。

もし、100万円ではなく、1千万円を同じ株式に投資していれば、2千万円になっていたわけですから,元本1億円に対し、資金は1億1千万円に増えた、つまりリターンは10%になっていたはずです。

さらにいえば、1億円全てを同じ株式に投資していれば、2億円に増やせたはずですね。リターンは100%です。

しかし、一回の投資資金を巨額にした場合、ロスも大きくなりますから、1回に大きい資金を使いすぎるのも良くない事は、誰だってわかるでしょう。

数式では、あらゆるケースを想定した難しい式で説明できますが、

もっとも簡単なケース、(勝ったら元本が倍、負けたら0)の場合、

fを最適な比率として

f = 2* P -1
ここで、Pは勝率

となります。

ベル研究所の天才数学者、ジョンLケリーが考案した数式で、世界的にケリー基準として知られています。

これは、ギャンブルのように、負けると1回の掛け金が0になり、かつ、厳密に勝率を計算できる場合、そっくりそのまま、上記式を使って回答となります。

例えば勝率 0.55(55%)のギャンブルがあった場合、

f= 2*0.55-1=0.1=10%
1回あたり10%の資金を勝負に回すとベスト。

ということになります。

しかし、実際には、株式は負けても0にならないし、倍にもならないので、このまま使える数式ではありません.

そこで、投資商品を対象に先物取り引きのコンサルタントであったラルフビンスが『資金管理大全』で掘り下げたのですが、彼はこの手法を

Optimal f (最適f)

と命名しています。

元本割れというリスクの測定に、ケリー基準で計算したドローダウンを用いた点で名著と言われています。

株式投資における具体的な計算や利用の方法は、次回にでも、お伝えしたいと思います。

では、また次回