プロスペクト理論(奥村)

投資というのは、先が不確実な市場における意思決定を伴います。1960年代から学問として研究が本格的に始まりました。

それまでも、いろいろな研究はあったのですが、データ元が紙だったのでで局所的だし不正確であったり、頻繁な戦争などで市場が大きくゆがめられたり、そもそも学会も立ち上がっていなかったりで、正しいとか間違っているとかの追証ができなかったのです。

その後10年くらい研究が進んで、70年代には、すっかり証券市場の特性は明確に示され、合理的に意思決定する場合と、そうでない場合の結果は大きく差が出る事が示さました。

しかし、投資家は常に合理的に機械的な判断をできるわけではないので、そこがウィークポイントだったのです。

1980年代から、そのウィークポイントにメスが入れられました。心理学者が人間が示す行動と見通しに関して解明を始めたのです。その最初の論文がこれです(プリンストン大のサイトです。好きな人はどうぞ)。

プロスペクト理論と呼んでいます。
http://www.princeton.edu/~kahneman/docs/Publications/prospect_theory.pdf

その後もさらに研究が進み、人間はなるべく堅実な方を選択する事が実証されました。
(この成果で、2002年にカーネマンが心理学者としては初めてノーベル(経済学)賞をとりました)

なるべく堅実な行動とは、このようなことです。
たとえば、株式相場で、今1株100円(評価上)もうかっているとき、まだまだ上がると思い売却はしない人がいるとします。同じ人が、今1株100円損しているときに、これ以上下がると大変だ、と思い損切をするようなケース。
一方で、金額が大きくなると、その価値は麻痺する事も説明されました。

たとえば、1株100円ではなく、1000円(評価上)得した時に、もう1000円上げたところで、もはやその人にとって価値は2倍ではなく、1.5-1.6倍くらいなのです。

この理論では、大きく負けた人の価値も示されました。要するに、100ドル損した程度でも損したと最初は思っている人も、大きく負け初めて1万ドル損した時、もう100ドル損する程度はヘでもなくなっているという事です。

この理論を用いて
‘では投資家はどう行動し、なにに、いつ投資するのが良いのか’
という答えはまだ見つかっていません。

まだまだ研究中の分野ですが、人工知能を用いた投資において、人間を説得したり、投資をあおったり、あるいは、なぐさめる癒しコンピュータとしては大いに役割があると考えています。

では、また次回おたのしみに