日経平均リスクとリターンの検証 (魔術師 奥村)

今、手元に1950年9月7日から東証が算出を開始した東証一部修正平均株価のデータがあります。

実際には、1950年より前、1949年5月16日(–つまり、証券取引所が戦争後再開した日なのですが–)、に遡って東証が算出して発表しました。

これは、現在の日経平均株価、あるいは日経225と呼ぶ株価指数のことです。

その後、東証は、より相場の動きを説明できるTOPIXを開発し、1969年7月からTOPIXを新聞などで公表を開始しました。

もはや”東証一部修正平均株価”が不要になった東証は、TOPIX発表開始、丁度1年後の1970年6月30日に、”東証一部修正平均株価”の発表を打ち切りました。

日経新聞社は、その算出、公表の権利を東証から譲り受け、東証が発表を打ち切った翌日である1970年7月1日から、日経225平均株価(当時はラジオで相場を放送していたので日本短波放送の名前を取りNSB225)を算出、発表しています。

これが現在の日経225(あるいは単純に日経平均と呼ばれる指数)の歴史です。

この頃、つまり終戦後の時代は、現在のコンピュータは存在していません。

世界初の汎用コンピュータ’ENIAC’はアメリカ軍の最先端の作品で、数十トンの重量、160kwの電力を食う怪物ですが、これが完成したのは1945年です。

1951年には、これを大幅に小型化したUNIVAC1が初めて大学や軍用以外の目的でBureau of Census(商務省国勢調査局)に導入されていますが、当時の価格で100万ドルしたそうです。

このような時代、日経新聞社も、東証も、コンピュータなんてなかかったはずですから、計算は人海戦術でこなしていたことでしょう。それも、間違いなく発表するために、おそらく、何度か計算し、何度やっても結果が一致することを確認して発表していたのだろうと思います。

今や指数の計算はパソコンどころか携帯電話でも一発で計算できますね。

そこで、1949年以降ながーく続いている日経平均の値を使って、リスクとリターンの関係を、数値で示してみたいと思います。

投資期間が長くなると、リスクは減るのか?増えるのか?それを、市場のデータを使って数値を出し、その数字を使って検証しよう、ということになります。

まず、リターンは、どのように計算できるでしょうか?

買った日t=0時点の価格を P(t0)、売った日t=1時点の価格をP(t1)として

リターン= [ P(t1)-P(t0) ]/ P(t0)

ですね。

ここで、P(t1)とP(t0)の日数をnとすると、比較しやすいように、一日当たりに直して、

一日当たりの平均リターン =リターン/n

です。

ここでは、このリターンは、平均という計算で行われている事に注目しておいてください。

 

さて、リスクはどう計算するでしょうか?

 

ここから先は、少しだけ面倒なので、算数の好きな方が読み進んでください。

1990年にシャープ先生と共にノーベル賞をとったマーコヴィッツ先生は、1952年に’現代ポートフォリオ理論’というリターンもリスクも統計学で記述できる、という点において画期的な論文を発表しました。

その論文では、統計の考えを用い、平均と分散(あるいは、平均と標準偏差)の2つ変数を用いて、投資を説明しました。

統計学でいう平均をリターン、
統計学でいう標準偏差をリスク

として計算し扱う事と定義したのです。

このマーコヴッツの発明後、それまでモヤモヤしていたリスクの考えが明確になり、今や金融学においてはリスクの定義=標準偏差であるという常識となりました。
そして、誰にでも計算できるようになりました。

おそらく投資の世界で活躍している人は誰でも知っていることでもあります。

ちなみに、標準偏差とは、ばらつき具合を示す統計学的な用語であり、リターンが上下に変動する、その大きさのことです。ここでは、標準偏差に関する、それ以上詳しい説明は省きます。

さぁ、これで準備が整いました。

1949年以降(戦後の全ての)日経平均株価を使って、リスクやリターンがどうなっているか、長期投資におけるリスクがどうなっているか、調べてみようではありませんか。

次回に続きます。

お楽しみに。