【TOPIXは1800ポイントを維持、世界経済は再び上向きへ】(スズカズ)

鈴木一之です。5月も後半戦に差しかかりました。

3月決算企業の決算説明が終わりました。それに伴って見られた個別銘柄の極端なまでの株価変動も一巡しつつあります。

日本経済新聞がまとめた今回の決算データを載せておきます。金融を除く全産業合計です。

<2018年3月期>
売上高:+7.9%
経常利益:+16.9%
純利益:+34.6%

<2019年3月期(予)>
売上高:+2.7%
経常利益:+1.0%
純利益:▲2.1%

前期実績の経常利益の伸び率(+16.9%)は、第3四半期の決算集計が明らかになった3か月前の時点での予想とほぼ同じです。したがってその点に関してはサプライズはありません。

今期の予想ベースの経常利益の伸び率は、現時点では(+1.0%)にとどまっていますが、これも期初の時点では企業サイドとしては極端に強い数字は出してこないので、この時期としては妥当と言えば妥当です。

トヨタやホンダが前期はすべての四半期決算で、合計3度も業績の上方修正を発表したように、おそらく現時点で出ている数字は何があっても最低限、達成可能な利益水準なのでしょう。

決算発表の翌日に株価が急上昇(急降下)する銘柄がたくさん見られました。ロボット運用、もしくは瞬発力勝負の短期売買が峠を越し、ここからじっくり腰を据えて銘柄の選別が始まることになります。

先週の東京市場。マーケットは堅調な動きを維持しました。日経平均はその前の週の金曜日の+261円と、週明け月曜日の+107円で、一気に23,000円の大台突破も視野に入りました。

5月10日(木)に米朝首脳会談の日程(6月12日)と開催地(シンガポール)が正式に発表されてからは、緊張緩和ムードが高まり、この前後でNYダウは8連騰を記録していました。

ところがそう簡単には行かないところが、最近の株価のくせです。北朝鮮リスクが急浮上して株価は突如として神経質な動きに逆戻りさせられました。

5月16日、水曜日の早朝に北朝鮮は突如として予定されていた南北高級閣僚会談の中止を発表しました。米韓合同軍事演習の実施に対して疑念を深めたようですが、歴史的な米朝首脳会談を前にして、急にものわかりがよくなったかのような金正恩委員長が本来の姿に戻ったようでした。

しかしこれに対してトランプ大統領がすぐに反応しました。翌5月17日(木)には、北朝鮮に対して「非核化さえ確約されれば、金正恩委員長の独裁体制は維持する」との見解を明らかにしました。

リビアのカダフィ大佐のような無残な末路をたどることはない、ということが確約されれば「トランプ・金正恩」会談も一定の成果を収めることが可能、と期待することもできそうです。

よくボルトン大統領補佐官が受け入れたしたものです。この辺もポンペイオ国務長官の手腕でしょうか。

山あり谷ありの非常に神経質な1週間でしたが、それでもこの間のTOPIXは一度も到達したばかりの1,800ポイントを割り込みませんでした。

世間的に騒がれているほどには、米国の長期金利の上昇は気になってはいないようです。アルゼンチンを巡る穏やかではいられない動きも、他国への横への広がりを見せるまでには至っておりません。

為替はドル高・円安が進み、1ドル=111円台に乗せました。現象面だけを見れば、この点でも「リスクオフ」の状態からは距離を置いています。

今のドル高にはユーロ安が関わっており、欧州経済に対するシビアな見方が広がっています。その反映でもあるのでしょうか。ロンドン株式市場が静かに上昇を続けています。FTSE100は今年1月12日以来の水準まで上昇しており、今年の高値を更新しそうな勢いです。

先週のトヨタ自動車(7203)の決算発表がもたらした高揚感が、マーケットではいまだに維持されていると見るべきなのかもしれません。それほどまでにあらゆる意味でインパクトのあったトヨタの決算会見でした。

先週のマーケットの特徴は、何と言っても景気敏感株に流れが戻ってきた点です。鉄鋼株は元から不動のジリ高を続けており、がっちりと安定路線を歩んでいます。

そこに加えて先週は、化学セクターが順番に買われ始めています。リチウムイオン電池の日本化学工業(4021)をはじめ、日産化学(4021)、トクヤマ(4043)、デンカ(4061)、カネカ(4118)、そして信越化学(4063)。

今年の年明けに最も光り輝いていた化学セクターに動きが戻ってきました。さらに機械ではIHI(7013)、牧野フライス製作所(6135)、NTN(6742)、日本トムソン(6480)あたりが堅調です。

エレクトロニクスでは、太陽誘電(6976)、TDK(6762)、山洋電気(6516)、ニチコン(6996)、日本ケミコン(6997)などに上値志向の動きが見られます。

世界経済は今年の1-3月期に踊り場を迎えました。それが中国発の動きなのか、元二重スパイ暗殺未遂事件に関連して英国がロシアに対して経済制裁を行っている影響なのか、あるいは原油市況の上昇がコスト高につながっているのか。

このあたりの理由はまだはっきりとはわかりません。

その世界経済が5月から再び浮上する方向に動いている模様です。それが現在のように、景気敏感株が一斉に上昇している動きにつながっているように感じられます。

景気敏感株がここまで幅広く動き出しているのであれば、この次にやってくるのは日経平均などの株価指数の動きです。

国際政治は一寸先がまるで見えず、あいかわらずリスク要因も盛りだくさんではありますが、東京株式市場はおっかなびっくり、上値を追いかける展開も十分に考えられます。

以上