【「米朝首脳会談」は過去の話題となり、すかさず貿易戦争が浮上】スズカズ

日経平均(火):22,878.35(+74.31)

鈴木一之です。テレビにくぎ付けの1日でした。おそらく世界中がそうだったのでしょう。

2018年6月12日(火)。米国のトランプ大統領と北朝鮮の金正恩委員長が、歴史的な首脳会談を開催した日。2か月近くにわたって、「会談中止」と「開催」の間を大きく揺れ動き、そのたびに世界は振り回されてきました。

トランプ大統領が公開書簡で一方的に「中止」を宣言した時点では、事務方の準備時間がまったく足りないのでむしろその方がよい、という意見が世界の識者の間では圧倒的に多かったように思いました。

しかしそれが実際に開催の運びとなり、お互いに文書に署名する形で共同声明まで交わすまで演出してみたものの、やはり準備不測の感だけが残りました。肝心の「完全、検証可能、不可逆的」な非核化に関しては、焦点がはぐらかされたままです。

現段階では何を置いても、まず両者が会談を持った、という事実が一番大きいのでしょう。

全世界の耳目がこの時間、この一点に集中したという意味で、おそらく私たちも生きているうちにそう何度も目撃することのできない、きわめて画期的な出来事であったのは間違いないでしょう。

そのような「世間の耳目が一点に集中する時」に、案外それとはまったく別の地点、まるでノーマークのところで同じくらいに重要な変化が起こっていることが多いものです。

本日の東京株式市場では、外需株が売られて、内需株が全面的に買われました。

良品計画(7453)、ニトリHD(9843)がいきなり上場来高値を更新しました。ファーストリテイリング(9983)が5万円の大台に乗せてしっかりしています。

スタートトゥデイ(3092)、モノタロウ(3064)、すかいらーく(3197)、ウエルシアHD(3141)、ブロンコビリー(3091)という「3000番台」の若い小売関連株が軒並み上値を追いかけました。

ゼンショー、壱番屋、丸井、松屋、スシロー、シュッピン、ヨシムラフード、などなど、小売株、サービス業種の上昇はとても全貌を書ききれないほど、本日は一斉に上昇しています。

いきなり上値抵抗ラインを突破、という点では、テルモ(4543)、ナカニシ(7716)という医療機器大手も同様です。明らかに内需系の高ROE銘柄、小型グロース株に流れが集中しました。

それとは正反対に、輸出関連株、景気敏感株の劣勢が明らかです。とりわけ半導体関連のSUMCO(3436)、東京エレクトロン(8035)、信越化学(4063)、東京精密(7729)の下落はかなり際どいところに来ています。

シリコン・サイクルはいつ終わるのか、スーパーサイクルに入ったのか、の議論が1年以上続いていますが、ここで持ちこたえられないと半導体関連株の上昇トレンドも厳しくなります。

半導体の下げは半導体セクターにとどまりません。電機セクターはおろか、化学、自動車、機械セクターにも少なからぬ影響を与えることも考えておかなくてはなりません。

本日はトヨタ自動車(7203)が比較的大きめの下げとなりましたが、すべて連動しているようにも見えてきます。

昨日までの2か月間は、米朝首脳会談の開催がリスクオン、開催が中止されればリスクオフ、という図式が続いていました。そのようなわかりやすい手がかりは、明日以降は消滅します。

そのとたんに「関税25%」の貿易戦争が前面に浮上します。外需株は難しい局面を迎えます。どっちつかずの目まぐるしい展開が繰り返されてきましたが、しばらくは「強い内需、弱い外需」が続きそうな雲行きです。

以上