自動車関税、もしかかったら (魔術師 奥村)

ワールドカップは盛り上がりましたね。

今週は、予想通り相場も良い感じに向いています。

今回は、もし自動車に25%の関税がかかるとどうなるか、を軽く試算してみましょう。

手や目で確認したい人向けに数値も入れておきますが、数字が苦手な人は流し読んでください。

JAMA(日本自動車工業会)のデータによると、昨年(2017年)、日本における1年間の生産台数は969万台です。

そのうち、米国向け輸出台数173万台(うちトヨタ 71万台=41%)、金額では4.56兆円(日本の米国向け輸出額の30%).一台あたり単価264万円となっています。

日本から米国へ輸出する車にかかっていう関税は現在2.5%ですが、それが25%になります。増税額は、 25%-2.5%=22.5%です。

アメリカの新車販売台数は2016年に過去最高の約1,755万台(乗用車7,105,162台、小型トラック/SUV 10,445,189台)を記録しました(Autodataより).

このうち、日本車のシェアは、トヨタ:2,449,587台 (14.0%)
(うち71万台は日本からの輸出=174万台が現地生産、ただしメキシコやカナダも現地生産としている)

日産:1,564,423台 (8.9%)
ホンダ:1,637,942台 (9.3%)
スバル:615,132台 (3.5%)
マツダ:297,773台 (1.7%)
三菱:96,267台 (0.5%)

となっています。

日本車メーカー全体では米国シェア約38%を占めており、big3のメーカーの合計が約46%なので、いかにアメリカで日本車が売れているかがわかりますね。

売れる理由は、かつてのような安さではありません。むしろ、(少しですが)、平均より高い。日本車は、中の上程度の価格帯です。

では、どこに魅力があるかといえば、なんといっても品質の高さです。壊れないのです。

壊れないという事はランニングコストの低さに直結しますし、なにより、使いたいときに使える、実用に向くわけですね。

これは、車を足とする米国では大変に重要な要素です。

そして次にフォロー〈アフター)です。アフターがしっかりしていると、整備サービスでお金がとれるし、顧客も安心できるので、また次の販売につながる良さがあります。

実は、この2つの要素は、ドイツ車などと比べるとむしろ劣っています。

たとえば、故障率の低さでは、トヨタ(あるいはレクサス)ではありません。ドイツのポルシェがダントツで、最も壊れない車メーカーです。アフターも、ドイツ車と比べると素晴らしいとはいえない。

しかし、ドイツ車は米国でも高価です。特にポルシェは、1台の車体価格で日本車が何台も買えるほど高価なので普通の生活者向きの車ではありませんね。

しかも、いわゆる保険が圧倒的に高い欠点があります。高級スポーツカーは、米国では保険が激高なのです。

いずれにしても、上には上があるけれど、平均的な価格では、まぁ良い車、というのが日本車なのです。

さて、仮に、日本車の売れ行きが同じで、関税が高くなっても生活者は、文句を言わずに買ってもらえるとしましょう。

輸出金額は 4.56兆円で、それに対して22.5%の追加関税がかかりますから、

4.56 兆円 X 22.5% = 約1兆 円

の関税がかかります。当然に、これだけの金額が販売価格に転嫁されますから、実施に負担するのは、米国市民です。

1兆円という金額も凄いですが、これでは済まないのです。

日本車は、半分以上は北米で現地生産しています。トヨタは3割が日本から輸出、7割は現地生産です。

現地=北米ですが、メキシコやカナダを含みます。

悪いことに、米国は、メキシコやカナダから輸入する自動車に関しても関税をかけようとしています。

もし、日本車にだけ関税がかかる場合は、日本車だけが割高になるので、他社にシェアが移ります。

今回はライバルのドイツ車をはじめとする欧州車も同じように関税がかかると想定できますから、もっぱら、米国産の自動車が売れる事になるでしょう。

その米国自身、メキシコで’現地生産’しているのですから、生活者のためにはなっていない、というのが、今後公聴会(ちなみに本日開催されます)などでフォーカスされてくるでしょう。

以下、根拠を統計データで試算していますが、結果だけお伝えして終わりにします。

関税がかかる’その時’の日本車のシェア低下の想定もある程度覚悟しておく必要があります。

が、実際に発動されることにはならないとみています。仮に発動されても、限定的であり、ザルのように回避できるでしょう。その時、日経平均は、おそらく2万円を切らない、とみています。

では、また次回をお楽しみに。