人工知能で、思うこと (魔術師 奥村)

最近、人工知能という言葉を聞かな日がないと思えるほど、よく聞きます。

どこもかしこも、人工知能でxxを実現、人工知能で快適なooに、という売り文句。

自動運転が代表選手でしょうか。

人間は、目から入る情報だけで、車を運転できます。画像センサーから入る情報だけで、目的地まで、安全に到着できる運転ができるのです。そして、それは自動運転のゴールになるでしょう。

今の自動運転技術は、簡単に言えば、画像情報だけでは自分で判断できないので、前にいる車を認識した上で、前の車が止まれば自分も止まる、動いたら自分も動く、という事を判断します。

前に車がいないと、車線の真ん中で制限速度で動き続けるだけ、というのが、高速道路での自動運転の仕組みです。市街地での自動運転はできません。

つまり、まだまだ、人間の目や脳に遠く及ばないのですね。

ただし、レーダー、超音波、赤外線センサーを駆使し、障害物の接近や生態を識別しますので、人間が知覚するより早く、ブレーキに反応できます。前の車の突然のブレーキにも反応します。こうした機能は、市街地でも有用です。

ですので、眼の役割をするセンサー技術が主要であり、あまり脳の役割までは持っていないのです。車の世界では、自動運転(人工知能)ではなく、安全運転支援として区別しています。ある種の機械の自動化、マシーンオートメーションです。

マシーンオートメーションというのは、昔からありました。最も身近なのは自動販売機です。

偽コインを判定し、客が選んだドリンクを適切な温度で提供して、お釣りも渡す技術です。素晴らしい技術ですが、あまりにありふれているので、我々は、これを人工知能とは言いません。駅の切符販売機や自動通過認識も同様でしょう。
(ちなみに、ドリンク自動販売機は、日本だけの特殊な市場で、海外ではめったにみられません)。

人工知能というからには、もっと高度で繊細な判断をするものである、という暗黙の了解があるからだと思います。

ところで、Bloombergという経済や金融中心の情報会社がありますが、人工知能を使ったファンドの運用が失敗し、清算することになった、というニュースが最近出ました。

(2年も持たなかったAIファンド )
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-09-07/PEO4LK6K50Y101

これによると、2016年後半にスタートしたファンドは、その後、年率8-9%のリターンを安定的にもたらしていたが、2018年はマイナスになった。そこで、清算をすることにした、との事です。

高度で繊細な判断をする人工知能での投資技術が失敗した最初の事例になると思います。

今後の主流となる技術だと思いますので、どんどんやってほしい領域ですが、現状では、大きな限界があるということも意識しておきたいものです。