今回は、豪州を話題に取り上げます。
豪州、つまりオーストラリアの事は、あまり金融や経済の観点で話題に上ることがありません。
産業も、一般にはなじみが薄い、(鉱山などの)資源というイメージが強いですね。
このイメージは、僕自身のものでもあるのですが、中学の時、貿易産業と金額をみて国を当てよ、などという問題で知った、古い刷り込まれた知識によるものでしょう。
オーストラリアにおける資源産業は、確かに鉱山を中心に日欧に比べて特徴的な産業として存在しているという一面はあるものの、国全体の経済の付加価値に対する比率はわずか6.4%で、雇用でも全体の2%です(豪州統計局ABSの2018年データ)。
実際に高いウェイトなのは、サービス業や金融で、付加価値の73%を占めています。
さて、オーストラリアの経済は絶好調です。
過去28年間、経済はずぅーっと、毎年プラス成長を達成しています。
この長い期間、成長を続けているのは驚くべきことですね。世界最長です。
実に、1991年第3四半期以来2019年1-3月期まで、110四半期連続です。
1991年と言えば、日本が成長を止めた年です。28年間成長を継続できた国オーストラリアと、ほぼ成長を止めた国日本を、ひとりあたりGDPで比較してみましょう。スタートを1990年としました(IMF 2019年4月の名目DGPで算出)。
日本は、1990年代でも、前半は一人当たりのGDPでは成長を続けたのですが、1995年に入り成長が止まりました。その後2015年まで一人あたりGDPという点では成長がストップしました。
ひとりあたりのGDPは、一人当たりの所得に比例しますから、この20年間、日本は(ひとりあたり平均としては)所得が上がらなかったことになります。失われた20年ですね。
数値として記しておくと、昨年のデータでは、一人あたりGDPで比べると、55,350ドルでオセアニア1位、世界11位でした。日本は相当離されていて、39,000ドルでアジア3位、世界26位です(IMF 2019年4月更新データによる)。
単純に計算すると、一人55350ドル稼いでいるオーストラリアは、一人39000ドル稼いでいる日本より、1.4倍豊かである、という事になります。
実際、最低賃金は日本の倍が保証されているし、物価も、食料品や不動産を中心に首都圏より安いので、もっと差を感じるかもしれません。
このように経済を発展させてきたオーストラリアの株式は、この間どうなってきたのでしょう。
推移をみてみます。指数として、ASXをみます。
ASXは、東証でいうTOPIXのような指数です。
オーストラリア証券取引所(Australian Stock eXchange,ASX)が発表する指数の名前は、そのままASXといいます。
もともとは、1979年=500とした株価指数ですが、2000年からダウジョーンズ社が指数を算出、発表しています。アジア有数の時価総額が大きい市場です。期間は、先ほどのGDPの期間と合わせています(bloombergより作成).
多かれ少なかれ山谷ありますが、見事な右肩上がりと言ってよいですね。
110四半期連続成長した今、さらに世界記録を更新中する勢いのオーストラリアなのですが、昨年後半から成長記録は陰りが見えてきました。
景気減速の数字が見え始めたのです。最大の貿易相手国は中国ですから、中国景気の減速の影響が出てきたわけです。
政府も、昨年7月に、主にインフラ整備を中心に公共投資を増やしたものの、民間部門の設備投資は振るわず全体としては減速しています。
しかし、その状態にして、2019年1-3月期はプラス成長を維持(実質GDP成長率+1.63%)しました。
IMFによると、経済の先行きはまだまだ明るいんですね。
実質GDP成長率は
2019年+2.1%,
2020年+2.8%
2021年+2.8%
…
2024年+2.6%
と、数年後まで、2%台後半を継続する見通しです(2019.4.9,IMF HPより)。
豪ドルは、長期にわたり、日本円に対して安定しているので、為替リスクも大きくありません。
つまり、今後も成長を続ける見通しが高く、通貨レートも安定しているのですから、
ASXを対象とする投資は、長期投資に向いています。為替のヘッジは必要ないでしょう。
前回書いた、年金の自主対策としての投信選びの参考にもなると思います。
では次回をお楽しみに.