下げた相場を統計から考える (魔術師 奥村)

7月18日の株式相場は、大きく下げました。
まずは、今年3月以降のチャートをご覧ください。

 

 

 

 

今回の下げは、ニュース風には、こんな表現で記載することができます。

<例1 >
7月18日、東証1部の値下がり銘柄は2000を超えた。これほどの銘柄が下げるのは極めてまれである。下げ幅は令和最大を記録した。

<例2>
7月18日、市場は一時-476円安、20993円にまで下がったが、引け値ベースでは-423円安。
東証1部の値下がり銘柄は2000を超えた。これは今年3回目だが、過去2回とも、その下げをもって底入れしている。

例1は、こんな大きな下げはめったにないので、大変なことが起こった、と強調した書き方です。

例2は、同じデータをもとにしながらも、その後は上がったことを念頭に、大丈夫だ、という意見を暗に示した書き方です。

どちらも、間違いではありません。

しかし、文章を読む人にとって、受け取り方は、変わってきます。

この例では、日経平均の推移をもとにしているだけなので、検証もできます。

さっそく、やってみましょう。

日経平均の価格推移から、大きな下げ(あるいは上げ)と、その起こる確率は正確に計算できます。

7月18日、日経平均引け値ベースでは、422.94円下がりました。

これを、まずリターンに変換します。

前日17日の引け値は21469.18でしたので、

リターン 17日の引け値で買って 18日の引け値で売ったときのリターンは、

– 422.94 / 21469.18 = -1.97%

です。

これ以上下げる、つまり、-1.97%以下のリターンになる確率は、4.24%です。

(この確率計算は、先週ご提示した、過去の日経平均の標準偏差と平均リターンを使って、統計的な理論値を求めています。もしよろしければ、先週のブログも見ておくと参考になります).

つまり、7月18日の下げより悲惨になる確率が、理論値では4.24%あるのですから、その頻度は逆数をとって、計算できます。

1/ 4.24% = 23.6 日

23.6営業日に1回、この程度の下げは起こっているわけですね。

この値は、信頼できるのでしょうか。

本当かどうか、実際の市場で確認してみましょう。

-1.97%を上回る下げのあった過去をみてみると、783回発生していました。

戦後、東証営業日は、7月18日で,19144日ありましたので、

発生確率は、

783/19144 = 4.1 %です。
頻度は、 19144/783=24.45日に1回。

計算確率(理論値) 4.24%に対し、実際の起こった確率 4.1%ですから、ほぼ一致します。

計算した頻度 23.6日に一回に対して、実際に起こった頻度は 24.45日で、ほぼ一致します。

おぉ、理論どおり、ぴったり当たっていますね。

相場は、このように、統計でかなり正確に読むことができるんです。

ちなみに、1か月に1回起こる程度であれば、1年に12回も起こるということですから、大したことでもない、とはいえるでしょう。

先週のブログの答え合わせは、まだ行いませんが、もしお好きであれば、ご自身で、ためしてみてください。

では、また次回