レパトリとは (魔術師 奥村)

前回は、FXの実需とスワップという考え方を紹介しました。

ここでは、レパトリという考え方をご紹介します。

レパトリとは、レパトリエーション(Repatriation だがレパトリで通じる)、の略です。

海外にある資金を本国に戻すことをいいます。たとえば、海外子会社の利益、海外資産を売却した際の資金を、戻す時に使われる言葉です。

レパトリも、実需で、大きく為替相場を動かす原動力になるものです。

米国では、ブッシュ政権時に、レパトリで戻ってきた資金に課される法人税を、時限立法で2005年に限定して減税をした事があります。

還流時の本来の税率は35%でしたが、それを5.25%に下げて、1年という短期に限定して、レパトリを促進させたのです。

結果、3100億ドルの海外利益の米国還流をし、ドルを強くして成功しました。
これは、凄い金額です。

結果、この時期、ドル円レートは104円から117円まで、13円の円安ドル高をもたらしました。

 

 

 

 

この当時は、米国企業の海外留保利益は、1兆ドル程度であり、その31%を還流できたことになります。

海外の資金を国内に還流させ、設備投資や雇用の拡大に役立ちました。また、企業はそのお金で自社株買いを大幅に増加させ、株価にプラスをもたらしました。

トランプ大統領も同じ事を公約に挙げていて、実際、2018年12月、レパトリ減税を行いました。
2018年から、法人税を35%から21%に減税し、レパトリ減税も35%を15%(一度限り)としたのです。

実は、民主党の候補であったヒラリー氏も同じく公約に挙げていたので、民主党の賛同も得られらすかったのです。

米国が、米中貿易戦争をしていても、やけに株価が高いのは、こうしたレパトリや減税の理由もあったのですね。

ただし、2018年のレパトリ減税は、「1回限りだが、1年限定の法律ではない」、という点で恒久減税です。

従って、2005年ほどの効果は出ていないといわれています。

ドル円レートを確認してみましょう

 

 

 

 

あれ、ドル高どころか、円高になっています。

もしかすると、ドル円をみてはいけないのかもしれません。

ドルインデックスを見直してみましょう。
ドルインデックスというのは、欧州を中心として世界通貨に対するドルの強さを示すものです。

 

 

 

 

これでわかりましたね。

2019年は、ドルは世界に対しては強くなっているのです。

しかし、円に対しては、弱くなっている。

ドルの強さを見るときには、ぜひドルインデックスも合わせてみると良いでしょう。

ちなみに、クリントン政権時のルービン財務長官も、強いドルは国益にかなうとしてドル高政策をとりました。

ドルが強いと、米国は購買力が強くなるので、それでよいのですが、困ったのがアジアです。

多くのアジア通貨は、ドルペッグと呼ばれる、米ドルとリンクする制度を採用しており、ドル高=自国通貨高となり、輸出鈍化を招きます。

余談ついでですが、実力を超えて過大評価された通貨は、一気にヘッジファンドが売り浴びせて、通貨をいじりに来るので、経済がボロボロになります。

さて、日本企業にとって、3月は決算です。

日本企業の海外現地法人の利益を、日本に持ち帰り、決算書に利益として乗せる時期です。

当然、日本円で利益を表記するので、外貨を円に換えておく必要があります。

これを3月末日までに実現益として確定させることが多いので、年度末は、外貨売り、円買い、
つまり円高になりやすくなります。

 

過去4年間をみると、直近3回は、年が明けてから円高になっていることがわかります。

 

 

 

 

 

 

下落幅は年によりさまざまですが、数円は円高になっていますね。

これは、レパトリの影響と考えられます。

また、海外から見ると、10-12月期は、レパトリの時期であり、円を売って自国通貨に変換し、自国に還流する時期です。従って円安になりやすいのです。

今のドル円レートは、金利だけではなく、いろいろな参加者のそれなりの行動パターンがあり、それぞれ、それなりの理由があって、結果、円安になりやすくなっている、と言えると思います。